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Sun2013.12.29


かにみそ 倉狩聡

かにみそ 倉狩聡
角川書店

2013.12.26

かにみそ
百合の火葬


◇ かにみそ
第20回日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作。

ホラーといいながら、表紙は脱力系のかわいらしいカニ。

 蟹のための住みかを用意すべく、自室の水槽の中身をすべて庭にぶちまけ、
風呂場で洗う。しばらく放置していたせいか、水槽内は苔むし、ぬるるいていた。
 今、庭土の上では、色とりどりの熱帯魚たちが苦しく跳ねていることだろう。


げ。このコ、こわい…

浜辺で拾った小さな蟹が、TVを見、新聞を読み、
私と会話する。
旺盛な食欲。旺盛な知識欲。
ある日、私が殺してしまった彼女の始末を頼んだことから、
人の味を覚えてしまった蟹。
私と2人、人を狩る蟹。

そうとうエグイ展開も、表紙のカニのかわいらしさのせいで
不思議と中和される。

なにより、蟹のキャラがいとけなくてかわいい。

殺してしまった彼女の母親が職場に訪ねて来たことで、
罪悪感に目覚めてしまった私は、蟹が人を食べることが
耐えられなくなる。

『おれにできることならするよ? ともだちじゃん』
蟹はひどく無邪気に言った。

『おれは、腹が減ったら色んなもの食べるけど、ともだちは食わないよ』
おまえは食うの?

『ねぇ、寒いとさみしいってきっと語源が一緒だよね』

なんかね、ロッカーの中にいる間、時間がすごく長く感じてさ。
寒いな寒いなって思ってたら、それが途中から寂しいな寂しいなに
なっちゃったの。

『だってさ、おまえがお願いするなんて、今までないことだったからさ。
少しは役に立てたかなって思ったら、嬉しかったんだよねえ』
そっか。私は何でもないふりで歩みを速める。蟹が嬉しいと私も嬉しいのだ。
けれど今は。
「僕はきっと、もうお前の願いを聞いてやれないと思う」
ぽつりと呟いた言葉に、蟹も、そっか、と言っただけだった。


なんて健気な…

でも、表紙のカニがいなかったら、ここまでかわいく見えたかなー…
装画:西島大介。
『陽だまりの彼女(越谷オサム)』の表紙のヒトか。

表紙から、『たったひとつの冴えたやりかた(ジェイムズ・
ティプトリー・ジュニア)』みたいな寄生されちゃう話を
連想もしたけれど、寄生生物ではなかった。


◇ 百合の火葬
書下ろし。

こちらもちょっと切ないお話。
ユリはコワイけど。


第20回日本ホラー小説大賞読者賞は、
佐島佑(さじまゆう)『ウラミズ』。
これも読んでみたいですね。


倉狩聡 女性 1982年3月31日生まれ


[倉狩聡]  [かにみそ]  [くらがりそう]  [西島大介

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