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Tue2016.04.12


我が家のヒミツ 奥田英朗

我が家のヒミツ 奥田英朗
集英社

2016.3.31

虫歯とピアニスト
正雄の秋
アンナの十二月
手紙に乗せて
妊婦と隣人
妻と選挙


『家日和』『我が家の問題』に続く家シリーズの第3弾。
といっても、それぞれ独立した短編。

奥田英朗って、こんなに毒なかったっけ?
というくらい、ほんわりした感じ。

特に「虫歯とピアニスト」、「妻と選挙」が好き。

康夫は三年ほど前、これまでのユーモア小説路線からの
脱却を図るべく、犯罪小説を修英社から上梓していた。
市井の人々の心の闇と転落を書いた自信作だったのだが、
見事に売れなかった。

というN木賞受賞作家の康夫の話は、
ちょっとは自分のことなんだろうか。

≪井端さん一家≫シリーズ、
マンネリ化しているし、本人が飽きてしまっている
って。
改めて、伊良部シリーズはもう書かない、
って宣言かなー
残念


[奥田英朗]  [我が家のヒミツ]  [おくだひでお

Thu2013.11.07


噂の女 奥田英朗

噂の女 奥田英朗
新潮社

2013.11.6

中古車販売店の女
麻雀荘の女
料理教室の女
マンションの女
パチンコの女
柳ケ瀬の女
和服の女
檀家の女
内偵の女
スカイツリーの女


閉塞感溢れる地方都市。
中学・高校時代は、地味で目立たないコだったのに、
短大デビューして、年上の彼氏、キャバ嬢から、
墓地の分譲会社社長の愛人
→ 土建会社社長の愛人
→ 資産家の不動産会社社長(65)の妻になり男児を出産
→ 地元県議の愛人
しかも社長達はみんな突然死

こんなこと言うとなんやけど、わたし、糸井さんを尊敬するわ

だって、田舎の普通の女がやれることで一番どデカイことって保険金殺人やろ。

糸井さんは、女の細腕で自分の船を漕ぎ出し、大海原を航行しとるんやもん。
金持ちの愛人を一人殺すぐらい、女には正当防衛やと思う

あの夜、柳ヶ瀬のクラブで見かけた糸井美幸は、妖艶なカマキリに見えた。
ならば安易に近寄って殺されるオスが悪い。

稲越などどうせろくでもない政治家なのである。色仕掛けで金を搾り取り、
最後に殺したとしても、それはそれで天晴れなことのように思える。

一度でいいから自分も悪女になってみたい。


そして上がりは、県議の隠し口座(裏金)の2億を横領し、行方をくらます

「男好きのする女」って人生、やってみたかったな…

物語が終わった後、2ページイラストが続くのも面白いつくり。
食虫植物(女)に虫(おっさん)が近寄って…
次のページで食べられちゃう
おっさんのメガネ飛んでるし

章ごとに語り手が変わるので、深みというか深刻さに欠けるけれど、
閉塞感も十分充満しつつ、さらっと読めて面白い。


[奥田英朗]  [噂の女]  [おくだひでお

Sat2013.10.12


沈黙の町で 奥田英朗

沈黙の町で 奥田英朗
朝日新聞出版

2013.10.12


2年B組の名倉祐一が、中学校校庭の部室棟の脇で
死体となって発見された。
仲が良かったのは、テニス部の友人達、
2Bの金子修斗と藤田一輝、2Aの坂井瑛介と市川健太。
他殺か事故か自殺か。
警察の捜査が進むなか、名倉に対する傷害容疑で
14歳の藤田と坂井は逮捕、金子と市川は、児相送致に。

少しずつ明らかになる、名倉とクラスメイト、
テニス部員達との関係。

中学生の三年間は、人生で一番のサバイバル期だな

健太と瑛介がいたら、普通、いじめなんてありそうもないのに。
そんなに簡単じゃないんだな。

中学生か…


[奥田英朗]  [沈黙の町で]  [おくだひでお

Mon2013.07.22


港町食堂 奥田英朗

港町食堂 奥田英朗
新潮文庫

2013.7.21

第一便 美人ママに叱られたい  高知・土佐清水篇
第二便 謎の生物VS.美人女医  五島列島篇
第三便 名もない小説家、ひとりたたずむ  宮城・牡鹿半島篇
第四便 N木賞などおかまいなし  韓国・釜山篇
第五便 食い意地のせいなのか?  日本海篇
第六便 極寒の孤島に閉じ込められて……  稚内・礼文島篇


「奥田さんに港町を探検してもらって紀行文を書いていただきたいんですよ。
それで、港には毎回船で入りたいんです」

と、雑誌「旅」の企画で始まった寄港エッセイ。

第1便は、川崎港から高知まで17時間の船旅
17時間

最近雑誌の書評でほめていたのですが、
単行本が出たのは2005年。
奥田英朗が直木賞を受賞したのは2004年(空中ブランコ)。
ということで、これは2004年のエッセイ。

グルメ紀行ではなく、風景描写もわりと駆け足。
ではなにが書いてあるかというと、
旅の途中のなんということもないことが、
ゆるゆると綴られている。

ほんとにゆるーい旅エッセイ。
奥田英朗、エッセイも面白い

「旅」ってどんな雑誌だろうと思って検索したら、
2012年3月号で廃刊になっていました


[奥田英朗]  [港町食堂]  [おくだひでお

Sat2013.07.06


無理 奥田英朗

無理 奥田英朗
文春文庫

2013.7.4

地方都市、3町が合併して生まれたゆめの市。
県庁からゆめの市に出向中の相原友則、32歳バツイチ。
東京の大学に行きたい高校2年の久保史恵。
漏電遮断器の訪問販売員加藤裕也、23歳バツイチ。
新興宗教に救いを求めた堀部妙子、48歳バツイチ。
父の地盤を継いだ市会議員山本順一、45歳。


奥田英朗は、やっぱり読むたび印象が違う。
精神科医の伊良部シリーズ、の、奥田英朗
と、指さし確認

読んで早々に、デジャヴ…
再読でした
無論、ウロ覚えなのでもう一度読む

生活保護費の不正受給、スーパーの万引き犯、
勢力を拡大する新興宗教、悪質訪問販売など、
それぞれドキュメンタリーを見ているかのよう。

地方都市の閉塞感、さまざまな社会問題が
一冊に詰め込まれているのに、どこか"軽さ"が
あるのは、やっぱり「イン・ザ・プール」の
奥田英朗だからかな…

上巻裏表紙のあらすじに、
縁もゆかりもなかった5人の人生が、ひょんなことから交錯し、
と、あるけれど、5人の人生は交錯しなーい。
交差点で玉突き事故に巻き込まれるのを
「人生が交錯する」とは言わないでしょ…


[奥田英朗]  [無理]  [おくだひでお