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Thu2015.05.07


プリズンホテル 4 春 浅田次郎

プリズンホテル 4 春 浅田次郎
集英社文庫

2015.5.6

1 「うんと長生きして、
  文化勲章を貰うまでは、
  決して死にはしない」
   ――偏屈な小説家は言った。

2 「折も桜の花の下、
  お役人さんお仲間さんにゃお名残り惜しうござんすが、
  これにてご免こうむりやす」」
   ――死にぞこねの懲役は別れを告げた。

3 「ええ、神様。どうかご利益(りやく)を。
  本日の勝負はメインレースのカチホマレ。
  一気の逃げ切り……」
   ――クスボリ社長は神前に手を合わせた。

4 「ツカレタカラチョット旅ニ出マス」
   ――富江はそう書き置いた。

5 「いいかシゲ。極道てえのは、
  まずやさしくなけりゃいけねえ。強くなくちゃならねえ。
  つまり、辛抱のきく男ってえことだ」
   ――仲蔵親分は若者に杯を与えた。

6 「早まるんじゃねえぞ。
  向こうが仕掛けるまで撃ち返しちゃならねえ」
   ――番頭は従業員たちに命じた。

7 「おう、若(わけ)えの。
  おまえさん、八代目の子分かえ」
   ――老侠客は跡目を睨みつけた。

8 「ゆんべあの桜の名前ェを考えついたんだ。
  『放免桜』っての。どうだ、いい名前ェだろう」
   ――仲蔵親分はぽつりと呟いた。

9 「私だって現役の役者だもの。
  ママとかおかあさんって呼ばれるのはいやだわ」
   ――狐目の女優はぶっきらぼうに言った。

10 「がんばれ。待っているから」
   ――千両役者はベンツの窓ごしに言った。

11 「そういったお訊ねにはお答えいたしかねます。
  ご容赦下さいませ」
   ――支配人は記者の質問をきっぱりと拒否した。

12 「せつねえっ! それァあんまり
  せつねえじゃござんせんかい、おじき」
   ――仲蔵親分はボケ老人に懇願した。

13 「おめえは邪魔だ。俺以外はみんな邪魔だよ。
  そっくり同じことのできるやつなんて
  いるはずねえからな」
   ――板長は厨房を見渡しながら言った。

14 「ぜったいにフォーカスされないところで暮らします。
  ピンサロがまずければソープで働きます」
   ――小説家の妻は離縁を願い出た。

15 「こんな外道に、頭下げることァないぜよ。
  わしァ、弱い者をいたぶるような男は好かんですけえ」
   ――バーテンは客を睨みつけた。

16 「まあ何にせえ木戸の親分のお膝元で
  荒事に及ぶわけにも行くめえ。
  若い者がとんがらねえうちに、
  消えちめえ」
   ――兄貴分は岡林を睨みつけた。

17 「おまえ、こったら痩せちまって……
  苦労したんではないかい。
  悪い男にだまされたりしてはなかったろうな」
   ――教師は教え子を抱きしめた。

18 「すまねえが、今晩バクチを打(ぶ)たせちゃもらえねえか。
  なに、大それた盆なんざいらねえ」
   ――俣オジは言いづらそうに呟いた。

19 「ちょっとばかり仕事ができるからって、
  つけ上がるのもたいげえにしろ」
   ――板長はシェフを怒鳴りつけた。

20 「半方丁方、駒そろいました。
  ようござんすね。
  どちらさんも、ようござんすね」
   ――親分は右手にツボ、左手に二つの賽を挟んだ。

21 「何でせにゃならねえんだ。
  男が重々考えて、
  よしと決めてやったこっちゃねえか」
   ――老侠客は明快に答えた。

22 「いろんなことがあったけど、俺、
  あのころまじめだったから」
   ――偏屈な小説家はふとやさしい顔になった。

23 「銭ァいくらだって回しやす。
  極楽に行くも地獄を見るも、きょうてえきょうは
  気の済むまで打(ぶ)とうじゃござんせんか」
   ――仲蔵親分は紋付の双肌を脱いだ。

24 「ママ、おとうさんが、ジョーシしちゃいます。
  とめなきゃ」
   ――少女は慄えながら母の袖を引いた。

25 「きっと何かいまわしい事件が起こったんだ。
  ああ、イヤな予感がする」
   ――支配人は廊下の先を見つめた。

26 「なあ、旦那。あんた今日一晩で、
  人生を変えてみる気はねえか」
   ――老人は瞳を炯炯(けいけい)と輝かせながら言った。

27 「何べん言ったらわかる!
  いつまでもこんなところにウロウロするんじゃねえ。
  帰(けえ)れ、帰れったら、帰れっ!」
   ――板長は身を慄わせて怒鳴った。

28 「正義は決して屈してはならない。
  すべての悪を、俺はたださねばならない」
   ――老刑事はよろよろと立ち上がった。

29 「男はやさしいだけじゃいけねえ。
  強くって、やさしくって、辛抱のきくてえのが、
  本物の男なんだぜ」
   ――老侠客は疲れた目を細めて言った。

30 「かっちけねえ。これで地獄の閻魔様も、
  ちったァお仕置きに手心を加えて下さることだろうぜ。」
   ――老侠客は満開の花を見上げた。

31 「お控えなさんし!
  どうか、どうかあっしに免じて、
  ここはマイクをお控え下さいまし」
   ――仲オジは報道陣を怒鳴りつけた。

32 「私は春の申し子。咲き匂う花と大地の子――
  そして、誇り高き、オフェーリアの子!」
   ――少女は花の中で叫んだ。

旅の終わりに
プリズンホテルの思い出  浅田次郎
解説  中井美穂


裏表紙より。

義母の富江は心の底から喜んだ。孝之介が文壇最高の権威
「日本文芸大賞」の候補になったというのだ。これでもう思い残す
ことはない……。忽然と姿を消した富江。その行方を気に病み
ながらも、孝之介たちは選考結果を待つべく「プリズンホテル」へ。
果たして結果はいかに? 懲役五十二年の老博徒や演劇母娘
など、珍客揃いの温泉宿で、またしても巻き起こる大騒動。
笑って泣ける感動の大団円。


ちょっとだけ読んで寝るつもりが、
結局、読み終わるまでやめられなかった

あーあ。
プリズンホテル、全4巻、終わっちゃった…

面白かったー

良く考えると、なんだかおかしなところとか、
回収されずに終わったようなところもあるけれど。
勢いにのって読んで、あー面白かったーで終わる。
That's Entertainment

いやでも、やっぱり富江が気になる…


[浅田次郎]  [プリズンホテル]  [4]  []  [あさだじろう

Wed2015.05.06


プリズンホテル 3 冬 浅田次郎

プリズンホテル 3 冬 浅田次郎
集英社文庫

2015.5.3

1 「あんたァ……
  もうどこにも行かないどくれよ……
  もうどこにも……」
   ――薄幸な女は夜汽車の窓にもたれて言った。

2 「死んだ(ステルベン)かどうかは私が決める。
  ここでは私が法律よ!」
   ――看護婦長は怒鳴った。

3 「なんだと、客だあ?
  てめえ、ヨタ飛ばすのもたいげえにしろ!」
   ――番頭は受話器に噛みついた。

4 「俺の今夜の宿は、あれだ」
   ――山男はピッケルの先を吹雪の峰に向けた。

5 「おやじが、迷惑をかけちまって。
  すまねえ、この通りだ」
   ――仲蔵親分は畳に両手をついた。

6 「いらっしゃいやし、狭え世間はお互え様でござんす。
  まずはそちらさんから、お控えなさっておくんなさんし」
   ――番頭は客を迎えた。

7 「おォやァのォ意見ォ承知ィーでェ
  すねてェー、だっ!」
   ――小説家の歌声が真夜中のロビーに響いた。

8 「いいか小僧。
  死んでもいいというのと、死にたいというのは大ちがいだ。
  一緒くたにするな」
   ――山男は恐ろしい声で言った。

9 「包丁一本さらしに巻いたって
  ……べつに命はかからねえもんなあ」
   ――板長は頑固一徹の顔を歪めた。

10 「お願いです、先生。
  あたしのこと、
  好きだって言って」
   ――美しい女は小説家をかき抱きながら言った。

11 「こんな、誰じゃあ、
  どっこのもんじゃあ!
  殺(と)っちゃろかい!」
   ――バーテンはカウンター越しに拳銃を構えた。

12 「ウワッ! カチコミヨ!
  カシラッ、スクランブルダヨー!」
   ――ゴンザレスは玄関から転げこんだ。

13 「そんなの、知ったこっちゃないわよ~~
  不景気なのよ~~リストラなのよ~~」
   ――死神はスノーモービルの荷台で声を慄わせた。

14 「だったら医者なんかやめて、
  お坊さんにでもなればいい。
  あなたにはお似合いよ」
   ――婦長は医者を罵った。

15 「勝手に死ねよ。
  俺はおまえみたいな女は大っ嫌いだ。
  ――おまえなんか死んじまえ。毒のんで死んじまえ」
   ――小説家は冷ややかに言った。

16 「僕は一生けんめい考えたよ。
  死なないですむ方法だって、
  ずっと考えてきたよ」
   ――少年は山男のさし延べたザイルを力いっぱい引いた。

17 「お客人、お待ちなせえ。
  唐突ではござんすが、折り入ってご相談が」
   ――仲蔵親分は二の腕の彫り物を撫でた。

18 「人間には生きる権利があるだろう。
  だったら死ぬ権利もあるんじゃないか?」
   ――医師は背筋を伸ばして言った。

19 「お客様のお訊ねになったこどだけに
  お答えするのがわたくしの仕事ではございません」
   ――支配人はいつに変わらぬ笑顔を向けた。

20 「あれこれ考えるな。
  男の選ぶ道は
  迷うほど多くはない」
   ――山男は追いすがる少年を叱りつけた。

21 「待っててよ、みんな。
  私が行くまで、ぜんぶ動かしとくのよ!
  止めるな。ひとつも止めるな!」
   ――婦長は雪晴れの青空に向かって叫んだ。

あとがき
解説  雨宮塔子


裏表紙より。

阿部看護婦長、またの名を<血まみれのマリア>は心に決めた。温泉に行こう。
雪に埋もれた山奥の一軒宿がいい……。大都会の野戦病院=救命救急センターを
あとに、彼女がめざしたのは――なんと我らが「プリズンホテル」。真冬の温泉宿に
つどうのは、いずれも事情(ワケ)ありのお客人。天才登山家、患者を安楽死させた医師、
リストラ寸前の編集者。命への慈しみに満ちた、癒しの宿に今夜も雪が降りつもる。


埋めちゃうの
雪の中に
もー清子がさっぱりわからない。
ハッピーエンドでよかった。

大騒動にすっかり忘れてしまいそうだが、平岡医師の苦悩が深い。

相良直吉は死んだ。孫のような三十五歳の内科医に、人生最悪の不幸を
体験させられ、およそ考えつく限りの拷問を受け続けたあげくに死んだ。

先進の延命療法――それは医学という名の暴力だと、平岡はそのとき
はっきりと思ったのだった。

自分は延命治療の名のもとに、八十半ばの老人をいたぶり殺したのだと
思った。いたぶり殺すのが医療であるのなら、一本の注射で安楽に殺す
ことが医療でないはずはないと、平岡は確信したのだった。


…20年前からそーなのか…


[浅田次郎]  [プリズンホテル]  [3]  []  [あさだじろう

Mon2015.05.04


プリズンホテル 2 秋 浅田次郎

プリズンホテル 2 秋 浅田次郎
集英社文庫

2015.5.1

1 「一天地六(いってんちろく)の賽(さい)の目次第(しでえ)に罷(みまか)りますのも、
  また乙(おつ)なもんでござんす」
   ――長老は会葬者たちに向かって言った。

2 「すまねえな兄弟。
  きょうはこの先生をお送りせにゃならねえから、
  面倒な話はまたにしておくんない」
   ――仲蔵親分は小説家をリムジンに押しこんだ。

3 「ねえ旦那。
  バクチだのテラだのミカジメだの、
  もうそんな時代じゃありやせんぜ」
   ――番頭は幹事の肩を抱き寄せた。

4 「おいてめえら、ナニのんびりしてやがる。
  緊急逮捕、騒音防止条例違反、
  及び威力業務妨害だっ、かかれ!」
   ――鬼刑事は部下たちに命じた。

5 「ごめんなさい、先生。ミカにできることがあったら、
  言ってください。なんでもします」
   ――いたいけな少女はおカッパ頭を下げた。

6 「ひばりちゃんが死ぬまでスターだったのは
  歌が上手だったから。あたしがくすぶっちまったのは、
  ヘタクソだからさ。この声を聴きゃ
  わかるだろ。他に何の理由があるものかね」
   ――老歌手はきっかりと目を据えた。

7 「代紋ちげえの旅人さんとお見受けいたしやす。
  こうしてひとつ宿にゲソ並べましたのも何かのご縁。
  まずはお控えなすっておくんなさんし」
   ――大曾根親分は腰を割って仁義を切った。

8 「あのう……包丁を貸していただけませんでしょうか。
  リンゴを剝きたいんですけど、よく切れる、包丁……」
   ――赤いドレスの女は板長に言った。

9 「だがお客さん。それじゃ女だてらに体を張った、
  あんたの本懐が遂げられますめえ――あっしらが
  手を貸すのァ簡単ですがね」
   ――番頭は考え深げに言った。

10 「抱いてよ、めちゃくちゃにして!
  これがあなたの夢にまで見た、柏木ナナの体なのよ。
  さあ、気のすむまで抱いて!」
   ――赤いドレスの女は小説家を押し倒した。

11 「用事がすんだらさがってくれたまえ。
  至急仕上げねばならぬ論文があるのだよ」
   ――偽大学教授は顔をそむけたまま言った。

12 「やつらが桜の代紋しょった任侠なら、
  俺たちも桜の代紋あずかる極道だ。
  お天道様の下に同じ桜の金看板はうまかねえ。
  この際はっきりと白黒つけたろうじゃねえか」
   ――マル暴刑事は勇み立った。

13 「『檜の間』でございますが、実は……中から鍵を
  かけたままお電話にもお出になりません。窓にも
  フトンを積んだりテーブルを立てかけたり――つまりその、
  何と申しますか、立てこもっておいでです」
   ――支配人は仲蔵親分に向かって答えた。

14 「まずいって、何がです?
  私たち慰安旅行に来てるだけですよ。
  残留の署員が、ちゃんと駐車違反だって
  取り締まっています」
   ――酔いどれ婦警は意地悪く笑った。

15 「忘れもしないわ、初めて会ったとき、あたしは十七、
  直さんは四十六、仲ちゃんは二十三。新宿の闇市だった」
   ――真野みすずはしわがれた声で告白した。

16 「でもね、町のやつらや県警のデカたちは、
  ここを『プリズンホテル』って呼ぶんス。
  どうっス、いい名前でしょ。
  シブイよなー!」
   ――元暴走族のフロントマンは誇らしげに言った。

17 「お言葉ですが支配人さん、
  あっしら死人ケガ人も稼業のうちでござんす。
  ましてや体張っての仲裁役で命を落とそうもんなら、
  あっぱれ男も上がるてえもんで」
   ――番頭は楽しげに言った。

18 「法律はそれほど公平じゃない。
  ――貧しい人間は
  法廷でも孤独なんだ」
   ――指名手配中の強盗は悲しげに言った。

19 「おいアキラ。
  悶着を仲裁するのがてめえら番頭の仕事だろうが。
  何にも起きねえうちから客にどうこう指図するたァ、
  順序が違やしねえか」
   ――大曾根は明快に言った。

20 「おお、撃ちなせえ。ささ、遠慮なさらずお撃ちなせえ。
  さあ、さあさあ!――斬った張ったも七十年の
  この老いぼれにとっちゃ
  鉛の弾せえ飴玉みてえに懐かしいやい」
   ――仲蔵親分は大見得を切った。

21 「まあそう嫌がるなよ、孝ちゃん。
  決してつまらなねえ話じゃねえぞ――
  黒子がよ、役者の背中から見てきた芝居ってえのは」
   ――仲蔵親分は偏屈な小説家に向かって言った。

22 「ところで、おじさんとみすずさんは、
  いったいどういう関係なんですか」
   ――偏屈な小説家は刺客のようにいきなり言った。

23 「やっぱりそういうことだったんですね。
  長々と武勇伝を聞かせたあげく、
  そんないやらしい話になるとは。
  失礼します」
   ――偏屈な小説家憮然として席を立った。

24 「おまわりだって人間だ。
  決して犬コロじゃねえ。
  俺ァそのことだけを、
  おめえにいつか言ってやりたかった」
   ――ロートル巡査は刑事に向かって言った。

25 「もういい。それでいいよ繁ちゃん。
  きっと天国のおとうさんも喜んでいるわ」
   ――支配人の妻は泣きくれる息子の肩を抱いた。

26 「ここはいいホテルだ。
  なにせ小説家が仕事に使うほど閑静で――
  ま、じっくりと物を書くにゃ
  うってつけの宿だな」
   ――ロートル巡査は鷲のような目をフロントに向けた。

27 「シメやすか、ブチ殺しやすか。
  それでも足んねえとおっしゃるなら、
  ナマスに刻んでそこらの山に埋めやすか」
   ――番頭は声を低めた。

28 「若い者ンが体かけよる話じゃったら、
  一言いうてつかあさい。
  わしが木戸の親分に恩返しできることは、
  こん体のほか何もありゃでんですけの」
   ――バーテンはアイスピックを握った。

29 「さあて、久しぶりに歌でも唄うか……
  ねえ仲ちゃん、お客を集めとくれよ」
   ――真野みすずはしわがれ声で言った。

30 「お客様にご案内申し上げます。午前二時三十分より、
  一階バーラウンジ『しがらみ』におきまして
  『真野みすずスペシャルナイトショー』を開演いたします。
  どうぞご来場下さいませ」
   ――館内放送が響いた。

31 「みんなに聴かせようとしちゃだめ。
  あんたの惚れた男のために、唄うのよ」
   ――真野みすずはマイクをさし向けた。

32 「この包丁はどうやったって人の肉には通らねえ。
  嘘だと思ったら、てめえの指でためしてみな」
   ――板長は不敵に笑った。

33 「おや、ふしぎなこともあるもんだぜ。
  こちらさんの手にゃ、盗人紋が見当たらねえ。
  そればかりじゃねえぞ、
  こんなにくっきりと世直し紋がある」
   ――仲蔵親分はふしぎそうに泥棒の掌を見つめた。

34 「女子供を泣かせるような外道は、この鉄砲常が
  生かしておかんですよ。三人やるも四人やるも、
  たいしてちがいはないですけ」
   ――バーテンはアイスピックを突きつけた。

35 「ヨタとばしてねえで、とっとと帰ったらどうでえ。
  ――ありがとうございやした、
  またどうぞお越し下せえ」
   ――仲蔵親分は紋付袴で客を送った。

あとがき
解説  安藤優子


裏表紙より。

花沢支配人は青ざめた。なんの因果か、今宵、我らが「プリズンホテル」へ
投宿するのは、おなじみ任侠大曽根一家御一行様と警視庁青山警察署の
酒グセ最悪の慰安旅行団御一行様。そして、いわくありげな旅まわりの
元アイドル歌手とその愛人。これは何が起きてもおかしくない…。
仲蔵親分の秘めた恋物語も明かされる一泊二日の大騒動。愛憎ぶつかる
温泉宿の夜は笑えて、泣けて、眠れない。



涙腺がゆるいので、ミカちゃんの健気さに涙
通勤電車であぶないあぶない。

20年以上前の作品なんだ…
20年も食わず嫌いでもったいないことをした。


[浅田次郎]  [プリズンホテル]  [2]  []  [あさだじろう

Wed2015.04.22


プリズンホテル 1 夏 浅田次郎

プリズンホテル 1 夏 浅田次郎
集英社文庫

2015.4.20

1 「おめえでさえ世間様から
  先生なんて呼ばれるんだぜ。
  この俺がリゾート ホテルのひとつやふたつ
  ブッ建てたって、何のフシギもあるめえ」
   ――仲蔵親分は偏屈な小説家に向って言った。

2 「これから旅に出る。
  一緒に行きたかったら上野駅の翼の像の前に来い。
  十時から十分間だけ待つ」
   ――偏屈な小説家はテレ・メッセージを入れた。

3 「おいてめえら。
  こちらがこんど、うちのオヤジさんの肝煎りで
  ホテルを仕切ることになった支配人さんだ。
  挨拶しとけよ」
   ――番頭は湯上りの客に向って言った。

4 「どうも妙だ。
  おい志保、そのホテルは本当に大丈夫なんだろうな。
  変わったことがなければ良いが……」
   ――若林隆明氏は夫人に向って言った。

5 「当ホテルにいったんゲソつけられた
  お客人は身内も同然、
  誠心誠意、 命がけで尽くさせていただきやす」
   ――番頭は拳を突いて言った。

6 「業務連絡!
  ただいま親分がご到着されました。
  全従業員、業界関係者、
  ならびに任侠団体客は
  ただちにロビーに集合して下さい」
   ――荒くれただみ声が、全館に流れた。

7 「静かな部屋……あいてますか。
  それから、酒と、食事も……」
   ――目のすわった家族連れが真夜中の玄関に立った。

8 「あいにく、代紋ちがいのにいさんがたに、
  問われて名乗れる身分じゃござんせん。
  わけあって旅かけておりやすんで」
   ――湯煙の中で、謎の旅人は重たい口を開いた。

9 「誰か覗いてるよ……
  おじさん、やっぱり見てるよ、ほら」
   ――偏屈な小説家は露天風呂の竹囲いを、おそるおそる指さした。

10 「上の者が白いと言やあ、
  黒いカラスも白いのがあっしらの渡世です。
  支配人をないがしろにすれァ、
  指の一本や二本とぶのァ当りめえのこって」
   ――番頭は支配人に言いきかせるように呟いた。

11 「おめーらマジかよ。
  この山ン中に落ち着くだとー。信じらんねーよなー。
  これじゃネンショーにでも行ってた方が、
  まだマシだぜ」
   ――暴走族は父親に向って言った。

12 「シャバに出てきてみたら、代紋が
  なくなっちまってましてね。まったく何のために
  懲役かけたんだかわかりゃしません。
  笑い話ですわ」
   ――謎の旅人は自らを嘲るように言った。

13 「嵐ノ夜ニハ、ゴースト出ルネ。
  首吊ッテ死ンダ、元ノオーナート家族ノ幽霊。
  サッキモ、……三階ノ廊下ヲ
  歩イテ行ッタノ」
   ――仲居は銀の十字架を憟わせた。

14 「よく見ろ。カワサキって書いてあるだろう。
  一九六六年製カワサキW1。
  OHVバーチカルツインエンジンを搭載した
  伝説の名車だ」
   ――シートの下から姿を現したバイクに、暴走族は目をみはった。

15 「ねえ、旦那さん、成仏するなんて
  かてえことおっしゃらずに、ずっとここに
  いらして下さいな」
   ――板長はそう言ってみごとな会席膳を勧めた。

16 「おお、とったろうじゃねえか。
  ヘタ売っての懲役じゃ、てめえも返り討ちに
  あった方がましだろ。死ねや」
   ――旅人はリボルバーの銃口を刺客の喉元に押しこんだ。

17 「もしや、七代前に誰かが坊主でも
  殺しゃしなかったかな」
   ――偏屈な小説家はふいに怖ろしいことを言った。

あとがき
解説  草野満代


裏表紙より。

極道小説で売れっ子になった作家・木戸孝之介は驚いた。
たった一人の身内で、ヤクザの大親分でもある叔父の仲蔵が
温泉リゾートホテルのオーナーになったというのだ。招待された
そのホテルはなんと任侠団体専用。人はそれを「プリズンホテル」
と呼ぶ――。熱血ホテルマン、天才シェフ、心中志願の一家……
不思議な宿につどう奇妙な人々がくりひろげる、笑いと涙の
スペシャル・ツアーへようこそ。


浅田次郎か…
と思って読み始めたけれど、面白い
通勤電車でまんまと泣いちゃったし

ただ…
孝之介がやたら女の人を殴ったり罵倒したりするのがイヤだ
かわいそうな子どもだったからってことなんだろうけれど、
殴るなら自分より強いヤツに向かえ!

浅田次郎って、こんなお話書くんだ…

続きが楽しみ


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